主要電解質の機能

ナトリウム

電解質であるナトリウムは人体にとっては重要な電解質のひとつで、塩化ナトリウム・重炭酸 ナトリウム・リン酸ナトリウムとして体液中に存在しており、その大部分が細胞外液に分布しています。神経細胞や心筋細胞などの活動には細胞内外のナトリウムイオン 濃度差が不可欠です。ナトリウムには細胞の外液の浸透圧を一定に保つための調整作用、体液をアルカリ性に保ち、筋肉・神経の興奮を弱める働きがあります。さらにナトリウムは、水分代謝、胃酸や他の分泌腺の活性化、暑さによる疲労や日射病の予防にも活躍しています。ナトリウムの過剰摂取は濃度維持のための水分貯留により、高血圧の大きな原因となります。ナトリウムは血液の浸透圧を調節する道具として使われています。つまり、我々の身体は、水を直接調節しているのではなく、ナトリウムを加減することで水を間接的に調節しているわけです。

カリウム

カリウムは主に細胞内にあり、細胞外での濃度はとても低く保たれています。カリウムは、細胞の外液に存在するナトリウムとバランスをとりながら、細胞を正常に保ったり、血圧を調整したりして、常に一定したよい体内の状態を維持するのに役立っています。ナトリウムはとり過ぎると高血圧の一因になりますが、その一方でカリウムは血圧を下げる働きがあります。しかしカリウムは静脈注射等により血中濃度が過剰になると、心臓の洞房結節のペースメーキングに変調を生じさせ、致死的な不整脈を引き起こすことでも知られています。カリウムを腎から排泄できない腎不全(人工透析)の患者さんでは、食事(野菜や果物など)で多量のカリウムを摂取したばあい、急性心不全をひきおこし死に至る場合もあるので注意が必要です。

マグネシウム

マグネシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素です。大人の体には20~28gほど含まれ、カルシウムやリンとともに骨をつくっているミネラルです。50~60%が骨に含まれていて、不足すると骨から遊離して、神経の興奮を抑えたり、エネルギーをつくる助けや、血圧の維持などの重要な働きに利用されます。

カルシウム

カルシウムは生体内に約1kg存在します。1日当たりの必要量は約500mgで、妊婦さんはこれの3倍強は必要です。体内のカルシウムは、99%は骨と歯に、残りの1%が血液などの体液や筋肉などの組織にあります。この1%のカルシウムが出血を止めたり、神経の働きや筋肉運動など、生命の維持や活動に重要な役割をしています。このためにカルシウムはいつも骨に蓄えられているともいえます。カルシウムには脳の活動を促す働きもあります。また筋肉の収縮には、カルシウムイオンがトロポニンという蛋白質に結合することが不可欠です。

アシドーシスとアルカローシス

通常健康なヒトでは、特殊な場合を除き、一般に体液量には急激な変動はありません。これは、摂取した水分量とほぼ同量の水分が体外に排出されるように調節されているためです。例えば、水分摂取量が増せば、その分だけ尿量も増すし、汗の量が増せばそれだけ尿量が減少します。しかし下痢や嘔吐による脱水症などをおこすと体液バランスが崩れ、循環不全、組織低酸素状態に至り、アシドーシスが起きやすくなります。 【生体の血液の酸塩基平衡は常に一定のpH(7.4)になるように保たれています。平衡を酸性側にしようとする状態をアシドーシス(acidosis)、平衡を塩基性側にしようとする状態をアルカローシス(alcalosis)と言います。】

重炭酸イオン

脱水状態など体液バランスが崩れ、循環不全や組織低酸素状態に陥り、アシドーシスになった場合にその酸塩基平衡を正常に戻す助けをする役割を持っています。