安全靴


安全靴(あんぜんぐつ、Safety boots)とは、安全靴は日本工業規格(JIS)において「主として着用者のつま先を先芯によって防護し、滑り止めを備える靴」と定義されています。重量物を扱い、重機を運用する工場や、鉱業、建設・建築、工事現場等の足への危険を伴う現場で着用者の足を保護することを目的としています。一般的に、保護性能を持った先芯を搭載した靴が総称として安全靴と呼ばれることがありますが、正しくは既定の材料を使用しJIS認可工場で製造された靴で、JIS規格の安全性・耐久性を満たした靴を「安全靴」と呼びます。JIS規格には主につま先の保護を備えた「JIS T8101 安全靴」と静電気帯電防止性能を備えた「JIS T8103 静電気帯電防止靴」があります。

安全靴

安全靴の概要

●安全靴の概要
JIS規格の安全靴の甲被の素材は革製の他、長靴等では総ゴム製も認められています。また、革の厚さにも基準があり、耐久性が求められています。つま先を保護する先芯は鋼製もしくは樹脂製の先芯が使用されており、近年では鋼製に比べ軽量な樹脂製先芯が多用されています。
安全靴のJIS規格は耐衝撃、耐圧迫、表底のはくり抵抗の基本性能試験があり、耐衝撃性能は、その性能により重作業用の「H種」、普通作業用の「S種」、軽作業用の「L種」の3つの作業区分に分けられています。 この基本性能試験の3項目の他に、かかと部の衝撃エネルギー吸収性、耐滑性、耐踏み抜き性、甲プロテクタの耐衝撃性、静電気帯電防止性能といった付加的性能試験が設けられています。これは重量物を扱う現場や静電気によるスパークの発生を抑制すべき現場、水や油などによる転倒の恐れがある現場、釘などを踏み抜く可能性がある現場など、それぞれの項目に応じた作業現場でも安全に作業が出来るようにするためです。また、この他にも耐油・耐薬品仕様や熱場作業用の耐熱靴、絶縁底など様々な用途に対応した性能を持つ安全靴が用意されています。
代表的な形状として、スニーカータイプの「短靴」、ミッドカットタイプの「中編上靴」、ブーツタイプの「長編上靴」、長靴タイプの「半長靴」があり、着用者の間での一般的な呼称となっています。

●JIS規格の安全靴とJSAA認定のプロスニーカー
つま先を保護するための性能を持った先芯を搭載した靴は、JIS規格を持った「安全靴」の他にも多くの種類の商品が販売されています。しかしながら近年、安全性能をうたった先芯入りスニーカータイプ作業靴の中に、あたかも「安全靴のJIS規格品」と誤解を与えるような表示をしたものや、安全性能や耐久性に問題のある製品も多く見受けられます。そこで、必ずしもJIS規格の「安全靴」を必要としない、多様な作業現場に潜むさまざまな危険から着用者の足もとを守るため、公的試験をクリアし一定の安全性能や耐久性を備えた作業靴の規格として、公益社団法人日本保安用品協会(JSAA)が制定した「プロスニーカー®」があります。

JIS規格品である「安全靴」とJSAA認定品である「プロスニーカー®」の両方とも主として足のつま先を守る作業用の履物ですが、それぞれを認定する機関と、製品の素材・区分や規格内容が異なります。 JIS規格は国家標準の日本工業規格、JSAAは公益社団法人日本保安用品協会の制定規格です。つま先(先芯)の防護性能等の安全性能や耐久性の違いにより、「安全靴」の3つの作業区分に対して、プロスニーカー®は普通作業用「A種」(安全靴のS種相当)と軽作業用「B種」(安全靴のL種相当)の2つの作業区分に分かれています。
安全靴の甲被の材質として主に使用されている牛革に対して、プロスニーカー®は主として人工皮革やビニルレザークロス、メッシュ材を使用しています。これらは牛革に比べ耐久性は劣りますが、甲被材としての自由度があり、多様なデザインを実現しています。その為、外見上は一般的なスニーカーとほぼ変わらないことから、JIS規格までの安全性を必要としない現場、運輸・物流・倉庫・ホテル・レストラン・飲食店等の接客・サービス業などで、デザインと安全性能のバランスの良さから広く着用されています。また、安全靴、プロスニーカー®ではありませんが、両者で培われた技術から転倒防止対策向けの滑りにくい作業靴や厨房用のコックシューズ、静電気帯電防止機能のあるナースシューズなど、様々な分野にその技術が応用されています。

●安全靴・プロスニーカーの画像一覧

短靴

中編上靴

長編上靴

半長靴

プロスニーカー